サイバー攻撃による情報漏えいやランサムウェア被害が後を絶ちません。
2026年の6月から9月だけでも、KDDI、アフラック、日本交通、ニチレイ、タイムズカーなど、多くの企業がサイバー攻撃による被害を公表しています。報道されるのは大企業の事例が中心ですが、実際には多くの中小企業も日々攻撃の対象となっています。
AIの発達によりサイバー攻撃は年々巧妙化しており、「自社は狙われない」とは言えない時代になりました。
浅間商事では中小企業の皆さまに、セキュリティ対策の基本として「ウイルス対策ソフト」「UTM」「バックアップ」の組み合わせをおすすめしております。
今回は、「UTM(統合脅威管理)」の初心者向け解説です。名前は耳にしたことがあっても、何かはよく知らない、という方はぜひご一読ください。UTM登場の背景を振り返りながら、その特徴や導入までをわかりやすく解説いたします。
企業のセキュリティ対策の歴史とUTMの登場
現在、UTMは多くの中小企業に導入が進んでいます。UTM普及の背景には、「機器の進化」「価格の低下」「脅威の増大」の3つがありました。
「機器の進化」は、企業のセキュリティ対策の歴史でもあります。その歴史は「侵入防止」と「ウイルス対策」が大きな2本の柱でした。その2つの対策からUTMが生まれるまでを振り返ります。
侵入防止(通信の保護)
1990年前後にインターネットが定着し、企業のネットワーク構築が活発になってきました。それに伴い、情報漏えいを防ぐためにセキュリティ対策がとられるようになりました。
インターネットと企業内を結ぶネットワークのプロトコルは同じであり、何もしなければインターネットから企業内のネットワークへ侵入し、機密情報を盗み出すことができたからです。
当時のセキュリティ対策はファイアウォールが中心でした。その名の通り、“防火壁”であるファイアウォールは、企業の内部と外部の間に位置し、外から社内への不正なアクセスを防ぐものです。
その後、通信の高速化に伴い、セキュリティの脅威も増してきました。ファイアウォールも進化しましたが、企業は複数のセキュリティ製品を使用するようになり、対策は複雑化していきました。
ウイルス対策(端末の保護)
企業の情報を守るためには、ネットワークからの侵入防止だけでなく、ウイルス対策も必要です。ファイアウォールで「通信の攻撃」は防げても、メールの添付ファイルやUSBメモリなど、端末に感染するルートは防げないためです。
コンピューターウイルスの歴史は古く、1980年代ごろからあったと言われています。その後、電子メールの普及に伴い感染が拡大し、企業や個人はウイルス対策ソフトを使用するようになりました。
しかし、2014年、ウイルス対策ソフト大手のシマンテック上級副社長(当時)が「ウイルス対策ソフトは死んだ」と語り、話題になりました。
ウイルスを生み出すハッカーの技術向上により、新種のウイルスだけでなく亜種も日々大量に作られています。1日に新しく作られるウイルスは120~130万個と言われており、過去に発見されたウイルスに対し、パターンファイルによって検知していた従来の方法では、対策が不十分になったのです。
ウイルス対策ソフトが検知できるのは「攻撃全体の45%で、残り55%の攻撃は防御できていない」と言われています。
UTM(Unified Threat Management:統合脅威管理)の登場
企業は機密情報を守るため、侵入防止やウイルス対策を行ってきました。
しかし、年々サイバー攻撃の手法は複雑化しています。侵入防止のために複数の機器を導入・管理したり、端末にはウイルス対策を講じたりと、いくつもの対策をとることは企業にとって手間もコストもかかるようになりました。

このような複数の階層におよぶ防御は、「多層防御」と呼ばれます。
多層防御の例
- 危険なサイトに行かせない(URLフィルタリング)
- 危険なメールを防ぐ(アンチスパム)
- ウイルスの侵入を防ぐ(アンチウイルス)
- 危険な通信を社内に侵入させない(ファイアウォール、IPS)
- 内部からの危険な通信を外に出さない(ファイアウォール、IPS)
この多層防御を1つの機器で実現したのが「UTM」です。
複数の異なるセキュリティ機能を、一つのハードウェアに統合しました。

「セキュリティ機器の費用低下」と「脅威の増大」
UTMの登場という「機器の進化」は、同時に「セキュリティ機器の費用低下」ももたらしました。
これまで複数のセキュリティ機器で数百万円かかっていた費用は、UTMでは数十万円で済むようになりました。これは、セキュリティ対策におけるコスト面のハードルを下げるものでした。
さらに、「脅威の増大」もUTMの普及に拍車をかけました。近年では、2015年ごろのランサムウェア被害、2020年から始まったEmotetが大きな山になっています。2026年現在でも、ランサムウェアはサイバーセキュリティ被害の上位にランクインしています。
このような背景があり、特に予算や人的リソースが限られている中小企業に、セキュリティ対策としてUTM導入が進み始めたのです。
UTMの選定と導入の流れ
実際にUTMを導入するために、必要な情報をまとめました。
UTMの選定
浅間商事は、次のようなUTMをおすすめしています。
ルーターモードで設置可能
UTMは、不正なアクセスを防ぐセキュリティ機器です。
ルーター(外部と内部をつなぐネットワーク機器)の直下に設置する「ブリッジモード」も利用できますが、既存のルーターを置き換えて設置する「ルーターモード」をおすすめします。
ブリッジモードのデメリット
- 通信速度が既存ルーターの性能に制限されてしまう
- 既存のルーターにLANケーブルを差したり、ルーター付属のWi-Fi機能を使えたりするため、UTMのセキュリティ機能をすり抜けて通信する手段が残ってしまう
- 既存ルーターとUTMの2つの機器を管理する費用と手間がかかる
- 通信障害が発生した場合の原因特定に時間がかかってしまう
- 攻撃者からルーターの情報が見えてしまう
小規模の企業では、セキュリティ機能が付いていない通常のルーターでインターネットを利用しているケースが多くみられます。
特に家庭用ルーターを利用中の企業がUTMを導入する際は、既存のルーターは撤去して、UTM1台で多層防御を施しましょう。
必須の4つの機能
浅間商事では、ファイアウォール、IPS、URLフィルタリング、ウイルス対策ソフトの4つの機能は必須と考えております。最低限これらの機能を備えた機器をおすすめしております。
なお、UTMを導入すればVPNも利用できるようになるため、テレワーク導入も兼ねて、セキュリティ機能付きのVPNルーターとしてUTMを導入されたお客さまもいらっしゃいました。
- UTM導入事例:助成金を活用し、テレワーク(在宅勤務)導入を実現。ITサポートで在宅時のトラブルも解消
- 参考:【コラム】中小企業向け:導入しやすいテレワークの仕組み3選 ~最も選ばれている「インターネットVPN」編
サンドボックス機能
最近は、ランサムウェアなど、今までのUTMのウイルス対策では防げない攻撃も増えているため、「サンドボックス機能」が付いたUTMをおすすめしています。私たちのお客さまでも、サンドボックス機能のおかげでランサムウェアを防げた事例が多くあります。
サンドボックス機能とは:攻撃されてもよい仮想環境(プログラムを自由に動かせる場所)を用意し、そこでプログラムを動作させて分析・確認する機能です。もし悪意のあるプログラムが実行されても、サンドボックス内であれば端末への感染を防げます。
UTMの導入・設置・設定
浅間商事では、次のような流れでUTM導入をお手伝いしています。
- お客さまに「必要なもの」と「必要な設定」を提供
- 既存ルーターをUTMに置き換え、UTMをルーターモードで設置・設定
- 運用開始後に定期レポートを提出
まず、現地調査にてお客さまの状況を把握します。次に、調査結果によって必要な機器とライセンスを選定し、機器の設定を行います。
前述のように、UTMは既存のルーターにつなげることもできます。しかし、ルーターが古い場合、インターネットの速度が遅くなるなどの悪影響が出る場合があり、おすすめしていません。
浅間商事では基本的にルーターは撤去し、ルーター機能を持ったUTMを単体で設置・設定しています。
過去にご相談いただいた中で、UTMが正しく設置・設定されていなかった事例が実際にありました。悪質なケースなどを、次の記事でまとめています。
本当にあったUTMにまつわるNG事例をご紹介します。社内に放置されているネットワーク機器はありませんか。「とにかくこれを置いておけばセキュリティ対策ができます。」というような言葉にはご注意ください。
また、浅間商事では、導入後は定期的にセキュリティレポートをお送りしています。
UTMを設置したものの、レポートがない状況では「攻撃を受けている実感がわかない」と耳にします。UTMの無料デモを行ったところ、デモ期間のレポートからウイルスや攻撃が検出されたケースも多くありました。
浅間商事では定期レポートを通じて、「何が起きていて」「何をすればよいのか」のアドバイスを行っています。必要に応じて随時設定変更にも対応しており、データのバックアップやさらなる対策など、今後のセキュリティ対策についてもご相談を受け付けています。
セキュリティ対策におけるUTMの優先度
前述した通り、UTMは1台で多層防御が可能な機器です。
しかし、企業が取るべきセキュリティ対策が、UTM1つですべてまかなえるわけではありません。
中小企業が最低限おさえておきたいサイバーセキュリティ対策について、次の記事にまとめています。
【中小企業向け】最低限おさえておきたいサイバーセキュリティ対策
会社を守るためのセキュリティ対策も過剰な投資は避けたいものです。そこで中小企業が最低限おさえておきたい対策と方法について解説します。本当に必要な対策を無理なく行いましょう!
まとめ
UTM普及の背景には、「機器の進化」「費用の低下」「脅威の増大」の3つがありました。
侵入防止とウイルス対策を行う中で必要になった複数のセキュリティ機器を、1つにまとめたものがUTMでした。
このUTMの登場は、導入におけるコスト面でのハードルを下げ、ランサムウェアやEmotetの流行などの脅威の増大により、中小企業にもUTMが普及しました。
浅間商事では、UTMの導入から運用まで、次の流れで進めています。
ただ機器を納入するだけでなく、お客さまのセキュリティ対策を継続してご支援できます。
なお、すでにUTMを導入しているお客さまには、現在使用しているUTMが本当に機能しているのか、10分程度のヒアリングで診断できます。ぜひお気軽にお問い合わせください。
▼UTM解説記事「中級編」はこちら
【2026年最新版】UTMの時流、メーカー比較―中小企業経営者・情報システム担当のためのお役立ちIT情報―
2026年最新のUTM事情を解説。サイバー攻撃の現状や中小企業に必要な多層防御、主要メーカー比較、導入・入替時の注意点、よくある質問までわかりやすく紹介します。
サイバー攻撃が激増している今、中小企業に必要なセキュリティ対策は、多層防御で守りを固め、正しく運用することです。
昨今のセキュリティ事情を踏まえて、UTMに関する最新情報をお伝えします。ランサムウェアの被害を防ぐため、UTM導入後は放置せずに効果測定を行いましょう。
(当ホームページの情報は、執筆時点もしくは更新日時点の情報に基づいております。掲載後の状況により内容に変更が生じた際は、予告なく変更・更新する場合があります。)


