(※こちらの記事は2023年5月に公開された内容を、2024年8月に更新しております。)
中小企業向けストレージ(データの保存場所)の時流
各自のパソコンに保存
中小企業はもともと個人作業が多く、各自のパソコンの中にデータを保管するスタイルが中心でした。
その後、他の社員との共同作業が増えてきました。初期の共同作業は次のような方法が主流でした。
- 自分のパソコン内のフォルダを共有し、データを見てもらう、使ってもらう。
- データをメールで送って入力してもらい、またメールで返信してもらう。
しかし、これらの方法には次のような課題がありました。
パソコンのフォルダ共有
- パソコンの所有者の不在時は、データにアクセスできない。
- 接続数が増えてくるとパソコンが重くなる。
メールでのやりとり
- メールのやり取りに時間がかかる。
- 容量が不足して送れない。
- メールボックスがいっぱいになってしまう。
- 共同作業しているファイルがメール上でどんどん増えるため、どのファイルが最新版かわからなくなる。
メールでの受け渡しはUSBメモリでの受け渡しに変わるケースも増えましたが、USBメモリ経由のウイルス感染、紛失、データ漏えいなどの危険性がありました。
また、個人のパソコンにデータを保存していると、異動や退職時に重要なデータが失われてしまうことがあります。パソコンの故障や紛失の際にデータを失うケースもあります。
そのため、主に利便性と安全性の観点から個人のパソコンではなく、「共有ストレージ」にデータを保存していく流れが始まりました。
ファイルサーバーの導入
当初、中小企業の多くは共有ストレージとして、ファイルサーバーを導入しました。HDD(ハードディスク)などの信頼性が低く、導入企業のITスキルも低かったため、すべてをサポートしてもらう必要があったことが背景の一つです。
しかし、中小企業がファイルサーバーを使うことの課題も見えてきました。
まず価格です。導入に数百万円、毎年のサポートに数十万円という費用が必要になります。その価格で容量は300GB以下、というケースも珍しくありませんでした。
また、ファイルサーバーはWindows ServerというOSで動いているため、ちょっとした設定変更や不具合対応にもかなりの専門知識が必要となり、中小企業が自社では対応できない状況が多々発生しました。
(画像引用元:BUFFALO WSH5420RN40S9)
NASの登場
そのような課題に対応するため登場したのがNAS(ナス Network Attached Storage)です。
HDDは技術の進歩で壊れにくくなり、信頼性が高まりました。
また、Windows Serverに比べ、中小企業にもわかりやすいLinuxを使ったシンプルな操作画面、1TB~4TBという大容量を100万円以下の価格で導入できることなどから、多くの中小企業で導入が進みました。
(画像引用元:BUFFALO TS6400DN2404)
最近はテレワークで、社外や自宅からNASにアクセスしたいという要望が増え、VPNで社外からもNASにアクセスできる仕組みを構築したお客さまが増えています。
また、Emotetなどランサムウエア対策として、NASのバックアップを強化するお客さまも増えています。
NASとクラウドストレージの併用
クラウドストレージも普及し始めています。
NASと異なる点は、マイクロソフトなど、サービス提供企業のデータセンターにデータが保管されるため、自社で機器を物理的に管理する必要がないことです。バックアップ体制や災害対策などにおいて、クラウドストレージはより安心感があります。
しかし、容量に対する価格、スピードなどがまだ十分ではないといった背景もあり、多くの中小企業は大容量のNASを残しつつ、日々使うデータや重要なデータのみをクラウドに追加で保管しているパターンが多く見られます。
NASの課題
中小企業でNASの導入が進みましたが、非常に重要な会社のデータが保存されているにもかかわらず、導入後の管理が不十分なために運用やバックアップに課題を抱えているケースが多く見られます。
よくあるNAS管理の危険なパターン
- そもそもバックアップ設定がされていない。
- バックアップは設定されていたが、何らかの理由でエラーが発生したために設定が停止している。
- ハードディスクの一部が故障しているが、交換されていない。
- 5年以上経過しても使い続けているため、いつ故障してもおかしくない。
- 24時間365日つけっぱなしの運用が多いが、電源管理対策(UPSなど)が行われていない(停電や落雷などのサージ対策、停電、法定停電時にHDDが故障し、本体障害などが起こる)
このような危険な状況を防ぐためには、導入した会社もしくは自社で定期的にNASのアラートや本体ランプをチェックする必要があります。
最近では、インターネット経由でNASの状態を遠隔監視し、バックアップエラーやハードディスクエラー、容量不足などを検知できるクラウドサービスが出てきています。メーカーによっては無料で利用できますので、ご活用をおすすめしています。
浅間商事は株式会社バッファローのプレミアムパートナーとして、「キキNavi」という遠隔監視サービスを活用しお客さまのNASの状況を日々監視しています。
主要メーカー比較表
本記事では、特に中小企業に導入が多い株式会社バッファロー、株式会社アイ・オー・データ機器、ロジテック株式会社の3社の製品を比較します。国内メーカーのNASは、この3社に集約されてきているようです。
メーカー名 | BUFFALO(バッファロー) | IODATA(アイ・オー・データ) | ELECOM(エレコム) |
---|---|---|---|
主な機種名 | TeraStation(テラステーション) | LAN DISC(ランディスク) | NetStor |
特徴 |
|
|
|
遠隔管理 | キキNavi | NarSuS(ナーサス) | AdminLink(アドミリンク) |
法人向けNAS商品ページ | 法人向けNAS : TeraStation | NAS(ネットワークHDD) |
NAS |
NAS購入時・入替時の注意事項
法人用のNASを選ぶ
個人情報や機密情報をはじめ、消えてしまうと業務に支障が出るデータの保存には、法人用のNASを選びましょう。
法人用NASの主な特徴
- 故障リスクの低い専用のハードディスクが使われている
- 同時に何人もの社員がアクセスしても快適に使えるスピード性能を持っている
- 遠隔監視システムに対応している
- RAID機能
- アクセス制限、バックアップ、電源対策、エラー通知機能 など
バックアップ設定を行う
NASに使われているハードディスクは消耗品です。必ずそのNAS以外のバックアップを取りましょう。
RAIDについて
RAIDはバックアップではありません。ハードディスク以外の部分が故障することもありますし、論理的なエラーが発生する場合もあります。
特にRAID1は、2つのハードディスクを同時に使い始め、同じように消耗するため、同時期に2つとも故障する可能性が高くなります。
また最近は、パソコンだけではなく、NASのデータまでランサムウエア(身代金ウイルス)に暗号化されてしまう事例が増えています。
そのため、追加で非同期のバックアップやクラウドバックアップを行うことをおすすめしております。クラウドバックアップは、災害対策にもなります。
スナップショットについて
通常のバックアップとは別に、スナップショットバックアップなどと呼ばれる機能があります。
誤ってデータを削除してしまったり、更新前のバージョンに戻したかったりした時に、簡単に以前の状態に復元することができる機能です。
その分容量は使ってしまいますが、こちらの機能もオンにしておくと有用です。
販売会社は複数検討
同じメーカーの製品でも、初期設定やバックアップ方法、導入後のサポートは販売会社によってさまざまです。必ず複数の販売会社に相談して比較しましょう。
よい販売会社が見つからない場合は、NASメーカーの問い合わせ窓口に相談してみましょう。地域の優良な販売会社を紹介してくれます。
導入後、運用状況の確認ができないNASは避ける
NASに使われているハードディスクは消耗品です。機器やバックアップに異常があった場合にはアラートメールを飛ばすなど、導入後も常に注意を払う必要があります。
3~5年でNASの見直しを
各メーカーの資料によると、NASは3年以上経過すると故障リスクが上がってきます。
また、LAN(回線)やパソコンのスピードが上がっているのにNASが古いままの場合、NASの処理速度がボトルネックとなり、業務全体のスピードに影響を及ぼす可能性があります。
よくある質問
NASのOSはWindows ServerとLinux、どちらが良いの?
多くの中小企業の場合、費用が安く運用も簡単なLinuxがおすすめです。
以前、Windows Server搭載NASはボリュームシャドーコピー機能を利用するお客さまの導入が多かったですが、Linux搭載NASでも類似の機能が搭載されたため、Windowsは特別な用途がある場合にのみ選ばれるようになってきました。
ラックマウント型とタワー型のどちらが良いの?
自社にラックがある場合は、ラックマウント型をおすすめしますが、タワー型を利用される中小企業がほとんどです。
ただし、タワー型は置き場所に注意してください。
- キャビネットの上に置いてあったため地震で床に落ちて壊れた
- 床に置いてあったため歩行者の足が当たってバックアップが止まった。電源が抜けた
- 長期間掃除をしない場所に置いてあったため、埃がたまり本体温度が高くなった
といった事例があります。
タワー型の場合、UTMなど他の機器と一緒に「防塵ラック」などに保管することをおすすめします。
UPS(無停電電源装置)は必要ですか?
必要です。
ハードディスクは電流の変化に弱い製品です。ビルの停電、落雷、地震時の停電、ブレーカーの遮断などで毎年多くのNASが被害にあっています。
NASの導入と同時にUPSの設置をおすすめします。
何年で買い替えるべき?
3~5年がおすすめです。メーカーのデータによれば、3年を超えると故障率が上がります。また、メーカーの延長保証可能範囲も最大5年であることが多いためです。
終わりに
NASは導入後、定期的な運用状況の確認や見直しが必要な機器です。
浅間商事は、中小企業が「早く」「簡単」「安心」にNASを使っていただけるよう、バックアップ、延長保証、サポート、UPSなどをすべてセットにした「あさまNASパック」をご提供しています。
また、バッファロー社のVAR Premiumパートナーであり、500台以上の中小企業のNAS導入および運用の実績があります。
クラウドストレージの併用や移行のご相談も可能ですので、NASの買い替えに限らず、現在のデータ保管方法やコストを見直したいお客様はぜひお気軽にご相談ください。